材料力学の教科書は正しいか－はりの曲げ問題におけるせん断力についての一考察

摘要

長年材料力学の講義をしていても，十分な考察をせずに，うっかり放置してきたことがある．その一つとして，先にはりの一様曲げの問題を扱った．また，多くの材料力学の教科書が多かれ少なかれチモシェンコを基にしているから，つい安心感を持ってしまったり，当たり前のことと見過ごしていて，学生から質問を受けて教壇の上でモクモタすることがある．はりの問題を解く場合，解析をする前に，まずせん断力線図(SFD)と曲げモーメント線図(BMD)の概要を書いて，大まかな挙動を知れと講義や演習では強調しているが，先だって，片持ちはりについて，教科書と参考書では，せん断力の正負が違うという指摘と質問を受けてここ数カ月悩んできた．この問題を同じ講義をされている多くの方に提示したが，適切な回答が得られず困っていた．やっと，何とか光が見えてきたので，ここに披露し諸賢のご高見をうかがいたいと思う．