金属疲労の基礎と疲労強度設計(11)－疲労き裂進展と疲労寿命

摘要

疲労破壊した実機部材の破面を観察すると，最終破断した延性破面のほかに，かなりの面積を占める平坦な破面が観察されることが多く，疲労き裂が進展した痕跡が残っている．そこには，荷重が変動したことを示すビーチマークやラチェットマーク，ストラエーションなど，破壊の原因を推測するに役立つ情報が残っていることが多い．したがって，破損部品の破面の保存には細心の注意が必要である．破損の原因には，設計や製造など製造者側に責任がある場合と使用者側に原因がある場合に大別でき，その原因究明の情報を多く含んでいる破面解析が非常に重要である．今日，電子顕微鏡を使った観察，また各種分析機器を使った分析技術が格段の進歩を遂げているので，技術者はその意義を認識して観察のための破面保存に十分注意をする必要がある．部材から破面を含む部分を切り出すときに，ガス切断による酸化や切削剤による腐食などの不注意は避けなければならない．