メッセージの重要度と配送期限を考慮したDTN経路制御手法の提案と評価

摘要

本稿では，通信インフラの無いエリアにおいて，モバイルユーザが重要度や有効期限などの属性を持ったデータを効率よく取得できるようにするため，Carry-and-forward に基づいたデータの経路制御手法を提案する．提案手法では，対象エリアに情報BOX と呼ぶ無線通信可能なバッテリ駆動の小型サーバを複数設置し，各情報BOXには，訪問ユーザが，隣接する他の情報BOXを次に訪れる確率と移動時間を保持させる．ユーザは，ある情報BOXに存在するデータを，自身が将来訪れる別の情報BOX（宛先情報BOX）に指定時刻までに配送してはしいというリクエストを通りがけの情報BOXに重要度をつけて投函する．多数のユーザが同様のリクエストを複数発行した際に，指定期限までに宛先情報BOXに配送されるデータの重要度の総和を最大化することが目的である．これを実現するため，情報BOXにおいて，通りがけのユーザに運搬させるデータのスケジューリング手法を提案する．具体的には，（1）一定のデータ到達率を保証するデータ複製数の見積もり，（2）コストパフォーマンス順のデータ送信，（3）配送予定時刻の推定によるデータの早期破棄，などの方法を用いて，消費通信帯域を軽減し，重要度の高いデータの期限内の配送率を高める．計算機シミュレーションにより，提案手法が他のスケジューリング手法と比較して20～50％程度重要度の総和が大きいデータ配送を実現することを確認した．