絵葉書に描写された都市景観の持つ感性情報の分析とその応用－ハルビンの歴史的絵葉書資料を事例として

摘要

本調査では，中国の都市ハルビンの3時期（ロシア革命前·満州事変前·満州国期）における3地域（傅家甸·埠頭区·新市街）の景観を描いたハルビン絵葉書を刺激材料として，絵葉書に描かれた都市の景観をSD 法に基づいて評価させることを試みた．調査は，時期と地域から9つのブロックに分けて実施した．すなわち，ある1つのブロックでは，3時期のうちの1つの時期における1地域の絵葉書から最大10枚の絵葉書を参加者ごとにランダムに選択し，それらをランダムな順番で2秒ずつ提示した．そして，参加者には，観察した絵葉書から得られる景観の印象を30の形容詞対項目からなる5段階尺度で評価させた．得られたデータを因子分析およびMANOVA によって検討した．その結果，印象評価により心理学的な意味イメージを見出しうーる可能性及び，そうした意味イメージが，歴史学による時代背景や地域的特徴などを支持しうる可能性が示された．本調査の結果から，景観研究や歴史学における心理学的アプローチの可能性について議論する．