人類の歴史からみた“食”と宗教のかかわり 第6回：「植樹」が取り戻す「生命の大地」②－「木を植える」それは「生命を植え，未来をつくり，平和を育てる」こと

摘要

森林は人を緑の空気で包み込み，宇宙から切り離された人を自然の中へ取り戻してくれる．さらに森林は，動物にとって最も重要な酸素をつくる環境，雨を降らす環境，食をつくる環境，魚介類を養う環境をはじめとして，無数のいのちの環境を整えながら地球上の生き物を守っている．陸上の森林は同時に淡水の中にも，海の中にも，緑の絨毯を敷いて魚介類を育てている．陸上の生き物も，川や海の生き物も，地球の生き物はすべて緑の森林に守られているのである．中国の天台は“草にも木にもなる仏なり”と説いた．仏とは宇宙と捉えることもできる．すなわち，宇宙は草にも木にも形を変えて生き物を護っているという意味である．緑は地球上のあらゆる生き物を守っているが，生き物を守る宇宙の働きが緑に形を変えて作用していると考えることもできる．今，急速に森林破壊が進むなか，私たちは緑を植えていのちを守る働きを広げていかなければならない．木を植えることは生命を植え，未来をつくり，平和を育てることにつながるからである．