接触角履歴と傾斜板上の液滴の転落について

摘要

固体と液体のぬれは，凝縮や沸騰伝熱を始め，様々な分野の問題に影響を及ぼす因子の一つである．特にマイクロスケールの流動や伝熱の問題では，表面張力や界面現象の重要度が増すため，ぬれ機構の正確な把握が望まれる．固液のぬれやすさは，一般に固液間の接触角の値を用いて評価される．通常の固体面では，あらさや汚れなどの不均質が原因となり，液体の移動方向に依存する2つの接触角，すなわち前進接触角と後退接触角が現れることが知られている．ぬれ挙動が関連する現象を具体的に考察するには，こうした接触角の履歴現象を考慮に入れる必要がある．ここでは，履歴現象の機構を，ぬれ挙動に伴う不可逆的な消散に着目したモデルに基づいて説明する．また，履歴現象が影響をもつ力学現象の例として，傾斜平板上の液滴の転落を取り上げ，転落の生じるメカニズムについて考察を行う．