温故知新

摘要

耐火物の世界に身を投じて，早30年弱になる。 初めて，耐火物誌への投稿依頼を受けたのは確か，20数年前の「サロン」だった。 その時，二つのことを書いたように記憶する。 一つは，大学を卒業し，工場に配属され，実験をするための道具が，スパテラ，ビーカー，化学天秤から，スコップ，バケツ，白ばかりに変わりカルチャーショックを覚えたこと。 もう一つは，顕微鏡で覗く耐火物の微細構造の美しさとそれを自由自在に設計できたらどんなに面白いであろうというようなこと。 前者については，その実験スタイルがいつのまにか何の抵抗もなく，耐火物とはこんなものだということで慣れてしまった。 後者については，多くの諸先輩が種々の耐火物で，その微細構造，組織制御が特性に非常に大きな影響を及ぼすことを見出してきたように，私自身も，微量成分が集積する粒界を制御することで，電鋳煉瓦の体積安定性や高温電気抵抗値などの種々の特性が左右されることを見出し，この不均質な耐火物の不思議な世界に魅力されてきた。