鉱山が多里地域にもたらしたもの

摘要

5月としては初夏を思わせるような暑さを感じる，とある日．若松滝を過ぎて町道の舗装が地道になり，串の速度を抑えながら走っていくと，やがて谷間の斜面に若松鉱山の建物群が見えてくる。その威容はまるで要塞のごとく映り，一度見たら忘れられない。その建物群のやや右寄り下にある坑道口の前に立つ。ふさがれた隙間に顔を近づけると，涼しいというよりむしろ冷たい凪が轟音とともに勢いよく吹き当たる。現在はどの坑道も入り口がふさがれているが，この風を通じて採掘が盛んに行われていた頃の坑道内の活気や喧嘩がうかがい知れる。