日本列島やその周辺海域の地形·地質を立体画像で体験する--最近の表現技術とデータの精度の向上

摘要

静岡地質情報展で「海を探る」というテーマの一環として，実際の海底の試料や調査機器の模型，映像などを使った展示（本特集，荒井ほか）と，コンピュータを使った仮想現実体験（3次元地形，地質の画像で見る）展示を行いました。 陸地や海底地形を，紙面などに画像を描いて立体的に見えるようにする技術，いわゆる立体画像は苦からいろいろ考案されていて，もうこれ以上はないと思っていました。 しかし，映画方式でスクリーンに2つの画像（映像）を投射して偏向眼鏡で立体視するのと同様の方法が，新しい技術によって印刷物としても可能になりました。 一方パソコンの普及した今では，陸地や海底のデジタルの地形データ（DEM）を用いて，コンピュータグラフィックス技術で任意の空中の高さや方向からの鳥瞰図をムービーとして3次元体験する方法は定番となっています。 最近は，データの量·精度などが向上したため，リアルで迫力のあるものになってきています。 さらに最新のコンピュータ技術により，ディスプレイ上に作成された3次元の地形·地質モデルを任意の角度から見たり，回転させたり，拡大縮小，縦横の比率を任意に変えて表示させることがマウスを使って簡単にできるようになりました。 これは，与えられたものを見るだけという受け身の鑑賞（ムービー）から，自分で見たいように操作できるという体験的鑑賞（観察）が可能になったということです。 コンピュータの最も得意な応用として，今後このような体験的，会話的方法を進化させた展示法や教育法，学習法が発展することは間違いありません。 我々地球科学の調査や研究に携わるものとしては，自然理解のための知識を，いかにして新しい表現方法によって伝達できるかということにも注意を払っておく必要があると思っています。