理科教育と総合的な学習に関するアンケート調査の報告

摘要

このアンケートの最後の質問は，岩鉱学会地学教育·一般普及教育委員会に関する質問であったが，本稿の趣旨から割愛させていただく．このアンケートを通じて，用意した質問に対する回答以外にも，学校数育と学会のかかわり方，学校教育と博物館や研究機関の行う成果普及活動とのかかわり方などについて，現役の教師層からの様々な意見をいただくことができた．学校数育と社会教育は本来別のものであるが，世の流れは両者の連携を図る方向に動いている．ここ数年，大学が資料館と称する博物館を併設したり，研究機関が専任の組織を置いて成果普及活動に乗り出す動きが相次いでいるが，この流れは今後も止まることがないだろうと予測される．とはいえ，指導要領の縛りを別にしても学校教育が一定の体系としてなされる以上（そしてそれに相応の価値を認める以上），学校側との十分なすり合わせを欠くことにより期待した効果が得られないことも心配される．学会は学術研究を振興する場ではあるが，今後は初等·中等教育を担う者と，博物館学芸員など社会教育や成果普及に携わる者が共通して活動する場としても存在意義を発揮できるのではないだろうか．アンケートの意見の中には，他の地学関連学会と連携した活動をもとめるものが多数あった．岩鉱学会はこれまでも，地学教育学会が幹事を務める「学校 颇?地学"関連学会連絡協議会」に参画してきた．さらに今年の合同学会で，地学教育委員会を合同学会運営機構内に置くことが決まった．これによって地球科学においても，学問分野を包括する親学会と密接に関連した教育関係委員会が存在するという，物理·化学·生物分野と同様の体制ができることとなる．これらの委員会が，「地学」に関係する諸学会が地学教育問題に取り組む共通の場となることが期待される．