9年ぶりの利上げ実施--小幅な上げ幅で効果は不透明

摘要

中国人民銀行（中央銀行）は10月28日、銀行預金を29日から引き上げると発表した。 上げ幅は0.18-0.81％で、改定後の金利は期間1年の貸し出しが0.27％上がって5.58％になる。 9年ぶりの貸出金利引き上げに踏み切ることで過熱投資抑制に本格的に乗り出した。 中国国家統計局は10月22日、04年1～9月の国内総生産（GDP）の成長率が実質で前年同期比9.5％の伸びになったと発表した。 第3四半期（7～9月）は9.1％で第2四半期（4～6月）の9.6％からやや減速したものの、昨年7～9月期から5四半期連続で9％台の伸び率となった。 行政指導に頼る抑制策は監視を緩めればすぐ投資が盛り返すなど限界が見え始めており、過熱抑制への決意を改めて示す必要に迫られていた。 さらに、原油高騰も影響し、中国の8月の物価上昇率は5.3％まで上昇するなど、インフレ進行への強い警戒感が高まってきたため、「これまでためらってきた利上げによるマクロ面での過熱抑制策を決断した」（米投資会社）とみられる。 ただ一方で、急激な金融引締めはかつての日銀の失敗のように逆にバブル崩壊の引き金となる懸念があるほか、経済成長が遅れる内陸部の政治的反発を呼ぶ恐れもあったため、小幅な貸出金利引上げで様子をみることにしたようだ。ただ利上げ後でも消費者物価を勘案すれば実質金利はほぼゼロの水準。高騰に歯止めがかからない不動産価格や今夏以降加速している設備投資熱をどこまで冷やせるかは未知数だ。市場で中国の追加利上げ観測が高まれば、人民元切り上げへの圧力が強まる。 米景気の減速懸念などと重なって、ドル安傾向を一段と加速させるリスクもある。