X.ゴム·エラストマーの最近の進展：(1)有機化クレー·カーボンナノチューブ/ゴム·エラストマーのナノコンポジット

摘要

ソフトマテリアルであるゴム·エラストマーの機械的物性の改質に，シリカやカーボンブラックのようなコロイダル粒子をブレンドすることはよく知られたことであり，多くの報告がなされている。その中で，新たなトレンドとして他のナノメータのサイズをもつ粒子を分散させたエラストマー系ナノコンポジットの特性や機能等に注目がされてきている。 今回のテーマについては，2003年の7月から始まった「解説VIIIナノコンポジットの科学」において，種々のナノサイズの粒子をエラストマー中に分散させたナノコンポジットの創製から構造と物性の関係の研究の流れを，調製法を主体に分類して述べたが，ここでは，ゴム·エラストマーをマトリクスとする（ナノ）コンポジットの研究例の多くが無機層状化合物（クレー）分散系であるため，それらに絞って解説しながら最近の動向について述べてみたい。また，新しい分散剤として炭素系化合物のフラーレンやカーボンナノチューブ等が注目されているが，樹脂にこれらを分散させた例はあるが，エラストマー系の論文等はほとんどないため，我々のグループの研究について少し触れさせて頂く程度でご容赦頂きたい。 ナノコンポジットあるいはハイブリッドは，ナノメータスケールの分散剤が種々のマトリクス中に均一に分散した新しい形の複合材料であり，用いる分散剤がもつナノメータサイズのディメンションの数によって分類する例もあるが，形状で見てみるとクレー等で代表される層状化合物では，単層の厚みがナノメータで幅が数百ナノからマイクロメータの板状であり，また，カーボンナノチューブやウイスカー等では直径がナノメータで，ナノチューブでは長さが数マイクロメータの繊維状である。