薬剤師にとってのバイタルサイン

摘要

今の保険薬局は「門前薬局」と揶揄されることがある.門前町といえば，その元になる寺社に価値の大半があるのであって，そこに集まる，ヒト，モノ，カネ，情報を見込んで形成される二次的 な町自体にそれほどの価値はない.医療法において「医療提供施設」とされた薬局に「医療従事 者」としての薬剤師が存在している価値は，「門前」と称される形態にはそぐわない.極めて高い客単価(処方せん1枚あたり約8,000円）と利益率(約25%)を誇る処方せん調剤の患者を，集客力のある医療機関の「門前」で運営し，その経営基盤を強固にしていくことは，営利企 業としての至極真つ当な手段である.医薬分業推進の国策に則って，それに伴うインセンティブが存在し，医療における医薬品の供給という極めて重要な部分を担うというのは，経営的指標をクリァし社会的意義も大きい.私自身も大阪で保険薬局を運営し気が付いたのは，ほぼ完璧なビジネスモデル（だった）ということである.ただ1点，「薬剤師のやりがいと尊厳」に目をつぶらなくては ならないという問題を除けば，である.例えば，いろいろな事情があり，疑義照会が容易に受け入れられづらいという環境は，薬剤師の存在意義にかかわる部分ではないだろうか.