メディカル ロジスティクスにおける災害時の医薬品管理

摘要

大規模災害時には世界各国からの医薬品提供が行われるが，その恩恵の裏には，提供医薬品の「質」における問題事例が多く経験されている。仕分け作業と管理体制における労力に重ねて，被災地のニーズに合致しない不要医薬品，言語表記の問題や有効期限切れにより廃棄となっているものも多い。医薬品の廃棄は環境への影響だけでなく，多大な労力と出費がかかり，その負担を被災地が被っているのが実情である。過去には，提供された70%の医薬品名が特定できない事例や，期限切れのァスピリンの焼却処分に6力月間を費やした事例などが数多く経験された。そこでWHO (世界保健機関）は1990年に医薬品提供の適正化に向けた「医薬品寄付ガイドライン」を作成している。より迅速な災害対応と標準化を図るために，1万人の被災者に対し，3力月間の医療支援を目的とした緊急対応用医療キットを作成している。