定常流型人工心臓用メカニカルシールにおけるしゅう動画の表面粗さが軸シール特性に及ぼす影響

摘要

Yamazakiらはこれまでに，これらの軸シール問題の解決策として，軸シール部の潤滑·冷却·洗浄を目的とし，クーリングウォータ循環機能を持ったメカニカルシールを開発した．さらに，これを軸流型補助人工心臓および遠心型補助人工心臓に適用し，それを用いて動物実験を行ない，その実用性を検証してきた．著者らは，このメカニカルシールの軸シール特性を評価するために，軸流型補助人工心臓用に開発されたメカニカルシールおよび遠心型補助人工心臓用に開発されたメカニカルシール単体の軸シール性能評価試験を行なうと同時に，153日間に及ぶ長期慢性動物実験を行なってこの補助人工心臓が実際に使用されているときの軸シール特性を明らかにしてきた．しかし，これまでの研究においては，軸シール性能に大きな影響を及ぼすと予想されるシールしゅう動面の表面粗さは，一般の産業機械におけるメカニカルシールの表面粗さに対する経験値に基づく値を用いており，これが人工心臓用メカニカルシールにとって最適な値であるかどうかの検討はなされていなかった．さらに，表面粗さは，しゅう動面の温度変化に大きな影響を及ぼすと予想されるが，これまでは測定する手法を確立していなかったため，その温度変化は未知であった．そこで本研究では，シールしゅう動面の温度変化を計測する手法を確立すると同時に，人工心臓用メカニカルシールの表面粗さが軸シール特性に及ぼす影響について検討したので，ここに報告する．