設計工学×デザイン学のシナジー（設計工学領域とデザイン学領域における研究比較を通して）

摘要

18世紀の産業革命以降，安価な工業製品が生産され始め，その後の科学技術の発展に伴い，生産量と品質は飛躍的に向上した．その際，エンジニアによる自然科学や工学を視座とした工学設計と，デザイナによる芸術を視座としたデザインの二つに分業化したとされている．このようなデザイン行為の分業化や専門化を伴う科学技術の発展は，安価で品質の良い工業製品を安定的に人々へ提供することを可能にし，物質的な恩恵を人々に与えた．しかし，同時に多くの問題を生み出している．例えば，近年顕在化している大規模事故の発生，大量廃棄や大量消費による環境汚染をはじめとした様々な社会問題が挙げられる．また，物質的に豊かな社会が構築されたことにより，物質的な豊かさから精神的な豊かさの充足へと人々の価値観も移行してきている．さらに，ICT社会も相まって情報を瞬時に手に入れることが可能になったことで，人々の価値観の時間軸変化も大きく，多様化している．そのため，21 世紀においては，デザイン行為により生み出してきた多くの社会的問題を解決するとともに，精神的価値の充足と多様な価値観への対応が望まれている．