低レイノルズ数域におけるタービン静翼の三次元流れ（損失と流れの構造に与える主流乱れ度の影響）

摘要

高性能の小型ガスタービンを開発するために，低レイノルズ数域（Re{sub}(out)＝2.5×10{sup}4～15×10{sup}4程度）での低圧タービンの空力特性が重要視されている。 産業用小型ガスタービンでは，セラミック材の導入などによるタービン入口温度の高温化に伴い，作動流体の粘性係数が増加して，レイノルズ数が低下する。 また，航空用小型ガスタービンでは，高空で飛行する際に空気密度が低くなり，レイノルズ数が低下する。このような低レイノルズ数域では，境界層の層流域と遷移域が増えるため，剥離の発生や二次渦の増大によって，翼列性能が悪化する。 一方，実機ガスタービンでは，強い乱れを伴う流れが燃焼器からタービン翼列に流入するため，主流の乱れの影響も無視できない。 特に，低レイノルズ数域では，主流の乱れが境界層の剥離や遷移に大きな影響を及ぼすと考えられる。 MurawskiらとBoyleらの直線翼列の実験では，レイノルズ数の低下により翼負圧面側で剥離が発生し，形状損失が増加した。 主流乱れ度の影響については，限られたレイノルズ数範囲（Re{sub}(out)＝20×10{sup}4程度）では，主流乱れ度の増加により剥離が減少するが，さらに低レイノルズ数では，主流乱れ度の大小に関わらず常に剥離が発生した。 これらは2次元流れの実験であるので，より実機タービンに近い環状翼列で，3次元流れへのレイノルズ数と主流乱れ度の影響を調べる必要がある。 本研究では，5孔ピトー管と熱線流速計によって，低レイノルズ数域における環状タービン静翼出口の3次元流れを測定した。 前報ではレイノルズ数の影響を調べたが，本報では，閉塞板を用いて主流の乱れを0.5％から8.9％にまで増加させ，主流乱れ度が低レイノルズ数域の環状タービン翼列に与える影響を考察した。