深刻化するHIPCsの債務問題

摘要

重債務貧困国（Heavily Indebted Poor Countries ： HIPCs)という言葉をご存じ でしようか。海外への膨大な債務を抱え、クビが回らなくなってしまった国々のことで す。アフリカを中心に約40力国がこの問題を抱えており、現在、債務の免除という形 でその救済が進められています。なぜ、借金を帳消しにしなければならないような事態 に至ったのでしょう。今月は、HIPCsが重い債務を抱えるに至った背景に触れつつ問 題の全容を明らかにします。かって本欄で（2010年9月号)、日本 の借金体質について説明しました。日本 のような先進国であれHIPCsのような 途上国であれ、国が膨大な借金を抱えて いるという点は同様です。しかし、HIPCs の問題は日本のケースとかなり性質を異 にします。というのも、HIPCsは「重債務」 だけでなく 「開発途上」の問題を抱えてい るからです。まず、この点を掘り下げま しょう。収入を上回る支出が必要な場合、政府 は何らかの形で不足分の資金を調達しな ぐてはなりません。周知の通り、日本政 府はI屑債によって不足する資金を賄って います。一方、これまで1兆ドレ以上の膨 大な外貨準備（対外資産）を積み上げてき たことからも明らかなように、ネットで見れば日本政府に対外的な債務は存在し ません。