静止衛星電波を用いたトモグラフィック降雨観測システムの構築と初期観測結果

摘要

衛星放送等を行うため,静止軌道上に人工衛星が多数存在している.これらの衛星電波にはKu－band が多く用いられているが,Ku－band電波は降雨中を貫通する際に減衰を蒙る.この降雨減衰計測と計算機トモグラフィー(CT)の手法を組み合わせ,雨域内の降雨強度の二次元分布を推定するシステムを構築した.今回,雨域は観測領域内ではその構造を変えず,一定の速度で移動するという仮定のもとに,擬似逆行列計算を用いた初歩的なデータ処理を行った.その結果,雨域内部の降雨強度分布の様子を可視化することができた.しかし,計算結果に雨域内部に減衰係数が負の値を生じる領域があったなど問題点も多い.今後,結果の妥当性の評価を始めとして,データ処理システムに改良を加え,これらの問題点を解決していく必要がある.