漁船労働の特徴と労働環境改善に向けた今後の課題

摘要

漁業は第一次産業に分類され, 直接自然に働きかけて 生産物を得る産業として定義される。従って産業として 現状を維持し, さらには発展していく上で, 生産対象で ある漁業資源と, 生産を行う上で必要な漁船や漁具等の 設備や道具, さらには同設備等を使用して生産活動を行 う漁業従事者に対する配慮が必要である。漁業のみなら ず, 農業や林業などの第一次産業における生産活動は, 自然条件による影響が大きく, 自然条件を利用し, また 場合によっては気象の変化等による様々な自然環境に対 応することが生産性に大きく反映するという特徴を有す る。そして, 第一次産業全体の問題として, 働く人たち にとつて魅力あるように労働環境を改善する必要があり, 特に労働災害や作業の安全性に関して早急に改善する必 要があるという, 第一次産業共通の労働に関する特徴や 課題がある。さらには, 第一次産業における技術（技 術の発達）や従事者の技能(技能の伝承)については, これまで就業者は家族や地域で受け継がれ, 必要な技術 や技能は親から子に伝承されてきた部分が大きかったの に対して, 今後は家族や地域以外からの新规就業者の確 保の必要性があるという共通の特徴がある。第一次産業の生産活動を担っている従事者の減少や高齢化が年々進む中, 従来のいわば「親から子へ」という伝承方式とは 違う, 新規就業者の確保が, 今後必要となってくるとい うことである。このように第一次産業の労働に関する技 術の発達や就業者, 技能の伝承という側面においても, 現在は大きな変革期を迎えていると考えることが出来 る。