小型ィ力釣り漁船のエネルギー収支

摘要

エネルギー不足の問題が注目される中.水産業.特に 漁業は化石燃料に依存して多くのエネルギーを消費する 産業であり，温室効果ガスの排出源としても知られてい る。海洋生態系を基盤とした漁業（経済活動）を健全 に持続的に行うためには，環境への悪影響を可能なかぎ り低減するとともに化石燃料を効率的に使用する方法を 模索する必要がある。著者らは漁業の産業構造の変革を 目標に環境や生態系の悪影響を抑え，エネルギー効率を冋上させるLIFE Fishing (Low Impact and Fuel Efficient Fishing)2)の考え方を提案してきた。この考え方に沿つ た場合.夜間イカ釣り漁業は灯火に蝈集したッッイカ目 の生物を選択的に釣獲するので，混獲などの問題が非常 に少ない漁業種類である3)。またイカ資源の経済価値を高めて生産する手段としても有効である。例えば青森県 の八戸みなと漁業協同組合のホームページ（http://jf-hachinohe-m.or.jp)では釣りやトロールなど異なる漁法 で漁獲したスルメイ力の相場が公開されている。20ほ年 10月30日のスルメイ力鮮魚の単価は傷つくことが少なく 1個体ずつ漁獲されるイカ釣り漁業では540 - 730円/kg 程度で，網で群れごと漁獲されるトロール物（300-310 円/kg)と比べて高価である。さらにこれが船凍品ゃ活 イカとしてさらに高い価値で取引されることもある。し かし一方で，夜間イカ釣り漁業は，より多くのイカ類を 自船近くに集めて漁獲量を増やすために，他の同業者よ りも集魚灯を増やす競争を続けてきた経緯がある4)。そ の結果，ィ力釣り漁業の燃油消費量は増加したと言われ ている。そして今日では，イカ釣り漁業は燃油価格の高 止まりの影響を受けて経営の悪化が顕著である。