人工魚礁およびその周辺における小型動物の分布 －漁場施設の魚類増殖効果に関する研究－Ⅰ－

摘要

我が国周辺海域には，多数の人工魚礁が水産生物の蠣集および増殖を目的として沈設されている。人工魚礁は蠣集機能のほか，水産生物に餌場，隠れ場，休息場，産卵場として利用されることで，その生残，成長，繁殖を助ける増殖的機能を備えていることが知られている。　人工魚礁が海底に設置されると，その周辺では海底地形が変化するとともに，流れ，照度，底質などの物理的な環境が変化する。さらに浅所では人工魚礁に海藻類の着生が見られることもある。また，それに応じて人工魚礁およびその周辺には，固着、潜入動物，葉上動物，底生動物，動物プランクトン，魚介類など多種多様な動物が分布するようになり，それらの動物に捕食、被捕食の関係，逃避，繁殖などの行動がみられる。その結果，人工魚礁が設置された水域の海底は，比較的単調な生態系から，より複雑な魚礁生態系へと変化する。人工魚礁が有するこれらの機能の中でも，とくに魚類の餌場としての機能は，魚類が人工魚礁に集まる大きな要因と考えられている。