森田弘道先生と遭遇したころ

摘要

この2月に小泉先生から電話で森田弘道先生の訃報を受 け，息をのんだ。「まさカゝ」という驚きと，つづいて「しまつ た」という思いが広がった。なぜかというと，私自身が， 昨年6月の父親の死去の前後のことどもにかまけて，うつ かり森田先生のご健康に思い致すことがなかったからであ る。聞けば，8月から体調を崩されていたとのことであつ た。ともに，動物生理学がこの国に根付く時代の苦労をと おして問題を共有し腐心してきた二人であった。「光生物」 と「動物行動」の生物系のプロジヱクトカ《相次いで特定研究 に採用されたころの話もよく聞かされてきた。国会で，ゴキブリの研究なぞに国民の血税を使うとは遺憾云々の代表 質問があり，今でこそ笑い話に聞こえる力《，ことほど左様 に生物学受難の時代を一緒に駆け抜けてきたのである。そ れを知る身であれば，父が斃れたときに，森田先生を思い， くれぐれもお大事にと申し上げてしかるべきであったもの を，ここに，ただ，黙して首を垂れる。