塩辛そうで塩辛くない，少し塩辛い研究「海の高度好塩古細菌」

摘要

高度好塩古細菌とは，文字通り「とても塩が好きな古細菌」である。最適な増殖条件として15%以上 のNaClを必要とする特徴を高度好塩性と呼び])，こ の特徴を持つものは一部の例外を除いて，古細菌の ハロバクテリア科に集中している。そのため，狭義の意味では「高度好塩古細菌=ハ口バクテリア科の 古細菌」である。本稿でも，この用語を狭義の意味 で用いる。高度好塩古細菌が好むような環境は，死海ゃグ レートソルトレイクなどの特殊な場所に限られる。 ヒトにとつては充分しょっぱい海水も，含まれる塩分は3.5%前後であり，ここに生息する海洋細菌の 多くは低度好塩菌に分けられる。ほとんどの高度好 塩古細菌は海水に入れると，浸透圧差によって破裂 してしまうため，極限的な高塩分環境から外に出て くることは考えにくレ。それ故，高度好塩古細菌は 微生物生態学の表舞台で脚光を浴びることは少な かったように見える。一方，海洋には未だ人の手で 純粋培養に成功していない固有の古細菌が存在し， その数も決して無視できないものであることが分 かっている。