精巣からの多能性幹細胞の樹立：やっぱり“化けた”精子幹細胞

摘要

古くより精巣や卵巣には奇形腫と呼ばれる腫瘍が生じることが知られている．他の一般的鹿蕩と異なり，奇形腫の中には歯や毛髪，神経線織などの多様な細胞種が生じてくる．本来生殖細胞を作るはずの臓器で，このような"場違い"な細胞が生じてくるメカニズムは多くの研究者の興味の対象になり，この研究の流れは最終的にノックアウトマウスの誕生へとつながるものになった．筆者は学生時代の病理学実習で奇形魔の組織切片を見たときの驚きをいまだに忘れられない．その後だんだんと生殖細胞の研究に興味を抱くようになり，大学院を修了後に奇形腫の研究で有名だったプリンスタ一博士（30年前に奇形腫細胞を初期胚へ移植し正常なキメラとして発生することを証明した）の下に留学したのも，この学生時代からの興味があったからにほかならない．