転写因子と生活習慣病

摘要

欧米型生活習慣の下で我が国でも糖尿病·高脂血症·肥満·心血管病など生活習慣病が激増し，罹患者数は数千万人に及んでいる．最近，発生工学的手法や分子遺伝学的手法により，生活習慣（環境因子）と相互作用し生活習慣病を惹起する鍵分子が同定され，その多くが転写因子や転写調節因子であることが明らかにされた．これには，核内受容体型転写因子，ホメオドメインを有する転写因子，forkhead 転写因子，ロイシンジッパー型転写因子，C2H2 zinkフィンガー型転写因子など，多くの転写因子ファミリーが関与している．これらの転写因子は，また多くの転写共役因子（CBP ，PGC-1 ）と相互作用して生活習慣病に関わる臓器，細胞の発生·分化·機能調節など多様な経路の調節を司っている．これらの転写因子や転写共役因子は，生活習慣病分子標的薬の最適のターゲットであり，画期的な生活習慣病治療薬の創出が期待される．