古代ゲルでたどゐ人類史第9回遺伝情報から見た家畜化と栽培化?人類史における動植物の家畜?栽培化の起源地と形質変化?

摘要

我々人類が動物の家畜化と植物の栽培化を始めたのは,1万年以上前に遡ると考えられている.栽培植物の獲得によって狩猟採集生活から農耕生活への転換という人類史上における大変化が起こった.この変化は様々な地域で独立に並行して起こっており,それぞれの地域に特徴的な種が利用されてきた(図1).世界の様々な地域でほぼ同時期に家畜?栽培化が起こったが,その背景には地球規模の気候変動や大型獣の減少が影響し,特に約13,500?11,000年前の間に起こったヤンガー ?ドリアス寒冷化(7万年前に始まって1万年前に終了した最終氷期後,温暖化が始まって急激に寒冷化に戻った現象)が非常に重要であったと考えられている1).狩猟採集生活を支えるための資源が減少したことにより,これを補うため家畜?栽培化が開始されたと考えられる.徐々に安定的な食料生産ができるようになると人口が増加し,共同体が大きくなり,やがて現代につながる文明が勃興した.現在のヒトの礎となった野生種の家畜?栽培化がいつ,どこで,誰によって,どのように起こったのかは非常に興味深い問題である.家畜?栽培化を研究することはヒトの生活の営みを知るという点で考古学,人類学の研究者にとって重要であるし,人為選択により家畜?栽培種の遺伝的背景がどのように変化り南の地域の珠江流域の集団であるという結果が報告され,考古学デ一夕からの起源地と一致しなかった3).