破骨細胞分化因子RANKLの発見がもたらしたもの～べンチからべッドサイドへ～①破骨細胞形成抑制因子(osteoclastogenesis inhibitory factor ;OCIF)の発見

摘要

大学を出てすぐに。大学院にも進学せず．民間企業でのバイオ研究の道を選んだ． 80年代半ばのことである．当時，猫も杓子もバィオ，バイオと盛り上がっており，雪印乳業でも新しくバイオの研究所を作ったと聞いたので。入社した．大学卒で研究所に勤められたのは幸運であったが，今から思えば研究職でなければ入社しないという勢いがあった． 最初の数年間で． 一通り分子生物学の知識と技術を身につけたが，主に取り組んだのはATBF 1(AT motif binding factor 1）と名づけた巨大な転写因子のクローニングと機能解析であった．その後，1991年から2年間．会社から派遣され，肥満細胞研究の第一人者であっ た米国ハーバード大学医学部（当時）のS.J.Galli教授の下で研究する機会を得た． テーマはc-kit遺伝子のプロモーター解析という転写調節の仕事であった。まだ，学位は持っていなかったが． 多くの実験系を自分で立ち上げ,教わるというよりもネイティブのドクターに実験を教えていた．研究室では核酸を標 識するために． アイソトープをよく注文したが，そのための書類に毎回サィンをもらわなければならなかった． 必ず。Enjoy!と言ってサインしてくれたのが，VEGF (vascular endothelial growth factor)の研究で有名なSenger博士であった。実験は楽しむためにするものだとあらためて認識した． まったくと言っ ていいほど会社には貢献しなかったカ入社から10年で論文と特許をいくつか書き。研究者としての基礎を固めた． 後に。この時の経験が生きてくるのであった．これから述べる話は，筆者が多くの共同研究者を代表して，一人の研究者の視点からまとめたものである． Enjoy!