103番元素が周期表を変える？！——ローレンシウムの第一イオン化エネルギーの測定から

摘要

元素周期表は化学に携わる者にとって「地図」に等しい.その「地図」の原型が19世紀後半,ロシアの化学者D.I. Mendeleevによってつくられたことは,高校の教科書でも取り上げられるほどよく知られている1). Mendeleevが作成した本来の周期表は,元素を原子量の順に並べると化学的性質が似通ったものが周期的に出現するという「周期律」の発見を受けて提案されたものだった.その後,H. G. J. Moseleyにより原子番号と特性X線の関係が明らかにされたことに加え,N. Bohrが提唱した原子モデルによって,原子核のまわりの電子構造が原子番号とともに周期的に変わることが示されたことから,元素周期表は元素が原子番号順に並べ替えられたものとなった.また彼らの発見により,それまで「ランタンもどき」として別枠扱いだったセリウム(Ce,原子番号58)からルテチウム(Lu,原子番号71)も周期表に組み込むことができた.これが1920年代のことであり,現代の元素周期表とほぼ同様の姿をそこに見ることができる.