9月8日読売新聞虫のフンから木造文化財の制作年代がわかった！

摘要

木造文化財の年輪年代学が専門の私は，年輪幅を計測するために多くの仏像や神像などの木造彫刻をX線CTで観察してきました.そこには木材の年輪とともに，木材に巣くう幼虫の残した落としもの（虫糞）や食ベかす（虫粉）が描写される場合があります（図1). これらは幼虫が木材を食ベた証拠にほかならず，木材を構成するセルロースやリグニン中の炭素は，虫糞や虫粉として分子構造を変えただけで，炭素原子自体はなんら変わることなくその場に残っているはずです.姿形は変わっても原子レベルで見ると同じ炭素ですから，放射性炭素(~(14)C)年代測定法が使えるのではないか，と直感しました.