「大学入試問題を解く」ことから見える言語,知識,世界理解に関する研究課題

摘要

本稿であげた研究課題の多くは,試験問題が本来測定しようとしている能力とは異なる場合が多いことに注意すべきである.これは,人間が無意識に行っている意味?知識処理や世界理解が現在の人工知能のボトルネックになっているからである.すなわち,大学入試問題を解くというプロジェクトにおいて解決すべき課題は,大学入試で求められる「高度な」知的能力ではなく,より一般的な知的能力であり,いわば「常識」の問題に一歩踏み込んだといえる.大学入試という制限された世界の中で,そのような知的能力の仕組みをどこまで明らかにできるかが問われているのである.