汽水産多細胞藻類の分類と形態(33)アオサ藻綱モツレチョウチン属（２）

摘要

今では使われることが少なくなった「管状緑藻」（英語の術語ではsiphonous green algae，分類群名としてはSiphonales）という生物群は，ひとつの大きな共通形質をもつ。 すなわち，単一の大きな細胞からなり，その中に多くの核を有する多核褒状体である。 生物の形態は多種多様であるが，この多核褒状体は実に不思議としか言いようがない構造である。 例外的に生殖細胞形成時に細胞質分裂をするが，栄贅細胞の増殖時に細胞質の分裂がなく，核分裂するだけで成長を行っている。 もし，一部の細胞壁が破壊された場合は中の細胞質はどうなってしまうのか？ それぞれの核は細胞のどの部分をコントロールしているのか？ この多核褒状体が複経になり，行き着く先の形態はどのようなものであろう.ミル属Codiumのような小嚢のギッシリと並んだ構造なのか，もしくはバロニア属陥血ぬのように直径2cmにもなる単細胞の大きな球状の形態なのか，さらにはサボテングサ属Halimedaのように大型の樹状の構造で，細胞の内外に石灰を沈着させた堅固な形態なのか。 この仲間のうち比較的単純な構造を持つモツレチョウチン属は，果たして上記ミルやバロニアの形態にどのようにつながりをもっているのか，疑問は尽きない。