ヤドカリ類の分類学，最近の話題－ヤドカリ科その２

摘要

2000年8月のこと，University of Marylarldの沖縄キャンバスに勤める海洋生物学者のRobert F．Bolland教授から，沖縄の浅海に自らダイビングして採集したヤドカリ類数種の標本が，生きている時の写異とともに，同定のために筆者のところに送られてきた。 そのヤドカリを調べていると，見たことがない種が入っていることに気がついた。それはごく小さく，全身が赤い種で，紺脚は右側が大きい（図1）。 浅海産ヤドカリの大半は，ホンヤドカリ科Paguridaeとヤドカリ科Diogenidaeに所属し，前者の紺脚は右側が大きく，後者は左側が大きいか左右ほぼ相称である。この赤い種も，紺脚は右側が大きいので，おそらくホンヤドカリ科であると考え，同定作業をすすめた。 ところが，そこで奇妙なことに気がついた。ヤドカリを裏から見ると口のところに，いろいろな形の付属肢がついているのが見えるが，その一番手前に第3顎脚がある。 ホンヤドカリ科では右と左の第．3顎脚の根元が離れているが，ヤドカリ科ではくっついている。 この赤い種は，第3顎脚の根元がくっついていて（図2A），ヤドカリ科の特徴を呈している。