誠の花を求めて

摘要

私は世阿弥が書いた能教本「風姿花伝」に心惹かれている1〕.この教本は能狂言役者の「芸」の伝承を目的として,役者の心得を説いた教典としてつとに有名であり, 「風姿花伝」宙の神髄は,各々の段階で?誠の花?が異なる姿を見せると説いている.最近知人からの誹詣で知ったが,千利休は直伝書の中に年齢に相応しい目標を定めて「茶道?に励みなさいと説いているが,千利休も多分「風姿花伝」を精読していたと思われる.読み返すうちに,自然科学を学ぶわれわれはこの書の其髄である「誠の花」の求道が物性学に通ずると理解できた.自然科学,特に物部学の修得には基礎の積み上げが必須であり,段階を追ってこそ,目標に到達できるという信念を共有することを学んだ.