脂肪種子が貯蔵するトリアシルグリセロール分子種のHPLCによる分析法の改良

摘要

植物の種子や果実や花粉は脂肪を貯蔵していることがある．これらいわゆる貯蔵脂肪は，テルペンやワックスなどを含んでいるわずかな例外的な植物を除くと1、リアシルグl）セロール（TAG）である［8］．このTAGはグリセロールの3つの水酸基それぞれに脂肪酸がエステル結合した化合物である．植物がもつ何種類かの脂肪酸の中から3つの脂肪酸が組み合わされ，分子構造が興なる多種のTAG分子が生じるため，たいていの脂肪種子は十数稗から数十種のTAG分子をoilbodyというオルガネラに含んでいる．どんな構造のTAG分子を含むかは植物の種により，またひとつの植物種でも器官により決まっている［2］．しかし，植物の種ごとにまた器官ごとに輿なる分子樫組成には何か生物学的意味があるのか，これら多くのTAG分子種は分子種ごとの代謝速度が異なるのかなど，TAGの分子種組成に関しては解明されるべき事柄は多い．さらに展近，これまでは種子と花粉にしか存在していないと考えられていたoilbodyが，植物体内にほぼ普遍的に存在していることが見出されたが［4］，その機能はほとんど解明されていない．これらの諸問題の解明には，TAGを分子種にまで分離し，さらには定量する方法の確立が必須であると考えられる．