A5083厚板の曲げ加工におけるスプリングバックに及ぼす曲げ型形状の影響

摘要

板材の曲げ加工は，塑性加工の中でも古くから行われている典型的な加工法であり，多くの研究がなされている．さらに，金属板材のV曲げ加工はこれまでに多くの解析的，実験的研究がなされてきた．これらの研究は，板厚が3mm以下の薄板の曲げ加工においてのスプリングバック，反り等のメカニズムについて述べたものがほとんどである．永井康友による厚板に関する研究では，板厚6mmの軟鋼板を対象にしており，それ以上の厚さを有する板の曲げに関する研究は見られない．しかし近年，厚板を曲げ加工した部材が様々な製品に含まれており，使用が増えつつある．また，厚板の曲げ加工では，外表面で生じる引張応力によるひずみが大きいため割れが発生する場合がある．特にアルミニウム合金の厚板のV曲げ加工において生じる不良変形は知られていない．現在，厚板の曲げ加工における不良現象の対策としては，熟練技術者の経験に頼っているのが現状である．そこで本研究は，アルミニウム合金A5083厚板のV曲げ加工において生ずる現象や不良変形を定量的に示し，実験的に検討を加え，その要因を明らかにすることで，厚板のV曲げ加工の特徴を明らかにすることを目的とする．