適応型トリーに基づく低計算量動画圧縮方式

摘要

動画像符号化の国際標準規格であるMPEG-1/2/4, H. 261そしてH. 263は離散コサイン変換（DCT）と動き補償（MC）をベースにした圧縮方式である．これらの方式は計算量が膨大であり，専用ハードウェアで実現すると回路規模が大きくなったり，ソフトウェアで実装する場合には高性能なCPUが必要となる．一方，八分木のような三次元階層トリー構造に基づいた動画圧縮方式は非常に計算量の少ない利点をもっているが，圧縮性能が良くないという欠点がある．本論文では，監視カメラの画像のように動き領域が小さい動画データに対して，計算量の少なさと圧縮性能が両立できる動画像方式を提案する．この方式の特徴は上層の三次元ブロックを適応的に任意形状のブロックに分割することにある．シミュレーション実験結果から計算量はMPEG-4方式の10分の1で，圧縮率が0.5 bit/pelにおいてPSNRが八分木方式に比べて1.2 dB改善されることを示し，本方式が低計算量な動画通信の発展に寄与できることを示す．更に，本方式の計算量の約40％を占める領域判定ユニットについて回路を設計してFPGAに実装し，回路規模についても本方式はMPEG-4方式に比べて大幅に削減できる見通しが得られた．