多機能新チタン合金「ゴムメタル」

摘要

著者らが最近開発した多機能新チタン合金「ゴムメタル」は，低ヤング率と高強度を両立することにより一般の金属材料より約一桁木きい弾性変形能（2．5％）を有する超弾性的な特性を示すと同時に，液体窒素温度から300℃程度までの幅広い温度域においてヤング率が変化しないエリンバー特性，また熱膨張を生じないインバー特性を示すなど，数々の特異な性質を併せ持っている．これらの一連の特性が，冷間塑性加工を施すことにより発現することから，塑性変形中の内部組織の変化が特性発現機構と関係していると考え，塑性変形機構について検討を行っている．また，ゴムメタルは室温ではとんど加工硬化せず，99．9％以上の冷間加工が可能な超塑性的な特性を有しており，これと塑性変形機構との関係も重要であると考えている．ゴムメタルは体心立方構造を持つβ型チタン合金であり，基本的にはTi-24at％（Nb，Ta，V）＋（Zr，Hf）＋Oと表示される組成で，組成平均の価電子数e／aが約4．24，DV－Xαクラスター法による結合次数Boが約2．87，Md 値が約2．45eVの3つのマジック·ナンバーを満たす組成の合金である．上述のユニークな特性は，これらの3つの数値が同時に満たされることで初めて発現し，その条件を満たす合金組成としてTi－12Ta-9Nb－3V－6Zr－O，Ti－23Nb－0.7Ta－2Zr－O（at％）等の組み合わせを見出している．また組成以外に，酸素の添加と前述の通り強冷間加工が特性発現に必須である．本稿では，ゴムメタルの特性，金属組織，およびその特性発現と関係する塑性変形挙動について紹介する．