過去数十万年にわたる温室効果ガス変動の復元

摘要

温室効果ガスは大気にわずかしか含まれていないが，気候の維持·変動にとってきわめて重要な役割を果たしている．温室効果ガスは，地球表層において発生·輸送·消滅（吸収）を絶えず繰り返しており，その循環過程はエルニーニョや火山噴火，氷期－間氷期サイクルなどと関係した気候変動によって影響を受け，それに伴って大気濃度も変化する．最も典型的な例は，氷期－間氷期に関わるものであり，前節で見たように，濃度変動は非常に大きい．一方，18世紀末の産業革命を契機に人間活動が活発化し，人為起源の温室効果ガスが大量に大気に加えられるようになり，濃度がこれまでにない速度で増加しつつある．その結果，近年の濃度は過去80万年に経験したことがないレベルにまで到達しており，人間活動の影響の大きさを改めて実感させるものとなっている．