デジタルヒューマン技術－人間をシステムとして捉える：人間の歩行，ロボットの歩行

摘要

私は大学で電気工学を専攻し，卒業後はリハビリテーション工学の道を歩き，病院で歩行分析の研究活動をしてきた．現在は大学の医療技術学部理学療法学科で運動学などを教えている．ロボット工学はまったくの素人ではないにしても門外漢である．しかし病院勤務時代には，ホンダのチームがロボットの研究をしているとは知らずに彼らの人間歩行研究をお手伝いしたし，現在も非常勤で勤務している産業総合技術研究所でロボットチームが活動しているのを見てきているので，二足歩行ロボットには関心がある．人間の歩行の研究とロボットの研究とはお互いに助け合いながら進歩するのが良いとつねづね思っている．お互いの研究が少しでも進むのを願って，二足歩行ロボットを念頭に置きつつ人間の歩行について書いてみようと思う．ロボット工学は門外漢ゆえ専門の方から見れば間違ったことやトンチンカンを言うかもしれない．しかし2つの領域の橋渡しなので多少のトンチンカンは許してもらわなくてはならない．それが何かの議論のきっかけになるやも知れぬ．それがおそらく編集者の意図であろうと解釈して浅学を省みず書く．またすべての読者がロボット工学の専門家ではないという前提で書く．