社会にとけこむシステムインテグレーション技術：人道的対人地雷探知·除去機器におけるシステム·インテグレーション

摘要

本稿では，人道目的の対人地雷探知·除去のための機器に関するシステム·インテグレーションについて解説する．本誌の「リレー解説」システムインテグレーションの最前線の第1回で小菅先生がまとめているように，システム·インテグレーションは，要素技術のシステムへのインテグレーションと社会へのシステムのインテグレーションという2つの観点からとらえることができる．人道的地雷探知·除去の分野では，その研究開発の成果は，実社会，すなわち地雷探知·除去の現場で，どのように役に立てることができたかで最終的な評価が明確にくだされる．また，人道目的という大儀のもとに公的な資金を使って進められるプロジェクトも多くあり，その実施内容の有効性，コスト効率などを評価指標としたアカウンタビリティの確保も重要課題となっている．このような状況を反映し，欧米では，人道的地雷探知·除去機器の開発構想から，それが合理的かつ公正に現場に調達されるまでの理想的なプロセスをベストプラクティスとして文書化して運用している．それは，まさに，社会のニーズをマーケティングし，開発機器が実社会へ融合できるよう適切な仕様を策定し，科学的知識および要素技術（シーズ）を統合してシステムを構築するひとつのシステム·インテグレーションのモデルといえる．以下，2章ではこの調達プロセスについて概説し，3章では日本での研究開発事例として，文部科学省の研究指針に基づき（独）科学技術振興機構(JST)が実施している「人道的対人地雷探知·除去技術研究開発推進事業」をこのプロセスに照らしながら紹介する．