ポータブル型複合X線分析装置による遺跡·文化財の分析－これで歴史はかねるか？－連載第29回 古九谷論争振出へ(4)：陶石の分析

摘要

今回の分析結果から，原料を2つのグループに分類することができた．1）佐賀県有田泉山産(1)，有田泉山産(2)，福岡産，石川県真砂村産；2）石川県九谷村産(1)，九谷村産(2) ．この結果は，泉山産の原料だけが際立った特徴を持っているわけではないことを示唆している．また，すいひを上手に行えば，FeやTiの含有量を減らせることや，AlやKの含有量を増減させられることも判った．したがって，古九谷の素地（胎）はすいひするという条件付ではあるが，佐賀県泉山産，福岡県福岡産，石川県真砂村産などの陶石からでも作り得るものと推定できる．つまり，泉山産の陶石だけが特定の組成や鉱物種を持っているわけではないことが明らかになった．これは，古九谷産地同定に際しての重要な情報である．