特集の理解を深めるために一やさしい解説：磁気に関する用語·記号一

摘要

本特集「永久磁石材料の開発最前線」を組むに当たって，より一層の理解を深める一助として，磁気に関する用語·記号を解説することとした．電気磁気材料に関する教科書~(1）)と電気学会刊行の用語集~(2）)を参考にして，理工系の大学生が理解できる程度になるよう心掛けた．ただし，記号や単位は文献毎に交錯しており，異なった文献を見ると混乱する恐れはある．しかし，ここでは，磁石の世界における最大公約数的な解説をするので，物理的概念だけはしっかり把握して頂きたい．まず，磁石特性を見るに必須な磁気ヒステリシスループ（履歴曲線）を図1に示す~(1）)．縦軸がその物質（磁石）が保有する磁気量であり，JとBの2種類がある．したがって縦軸の記号には注意が必要である．まず，Jで示される磁化（＝磁化の強さ）はその物質が単位体積あたりで有する磁気モーメントのことである．ややこしいのは，J＝4πJやJ＝μ_0Mと示される場合もあり，この場合，IやMを磁化あるいは磁気モーメントとし，Jを磁気分極と呼ぶ文献もある~(2）)が，ここでは斯界の通則に従い，Jを磁化と呼ぶことに決める．なお，仇は真空の透磁率であるが，気にしない.縦軸のもう一つの磁気量は，Bで示される磁束密度であり，単位面積あたりの磁力線の数である．BとJの間には磁界Hを介して次の関係がある．B＝J＋μ_0H（式①）．なお，通常時J-H曲線が測定されB-H曲線に変換される．