エルーと電気炉

摘要

アルミニウムの電解製錬は，米国のホールとフランスのエルーによって独立に考案され，ホール·エルー法と呼ばれている．2人は1863年に生まれ，1914年に亡くなった．電解製錬の発明の年も1886 年で一緒であった．このような偶然の一致がよく話題にされるが，2人の性格や研究開発のやり方はまったく異なっていた．まじめで凡帳面なホールに対して，エルーは放噂で無頼な遊び人であった．ホールの人生はアルミニウムがすべてであったが，エルーはアルミニウムのはかにいろいろな開発を手がけており，とくに1900年以降の鉄鋼用の電気アーク炉の開発が広く知られている．エルーの出願した各国の特許を見ても，アルミニウム精錬に関する特許は初めのころの数件だけで，後半は鉄鋼用の電気炉の発明が圧倒的に多い．現在，鉄鋼生産における電気炉の役割はますます重要になっており，米国でエルーはアルミニウム製錬よりアーク炉の発明者として有名である．ところが，エルーについて書かれた文献の記述はアルミニウム精錬に関するものが多く，電気炉について述べたものは少ない．さいわいにエルーは各国に数多くの特許を出願しており，彼の活動を忠実に反映している．特許を参考にしながらエルーの発明家人生を見ていく．