ガス浸硫窒化（マルチナイト）

摘要

浸流窒化法は鉄鋼材料の耐摩耗性，耐焼付性，耐力ジリ性の改善を計るため，鉄鋼材料の表面に窒化物および硫化物を生成させる表面硬化法である．1953年にフランスで窒化物の溶融塩に硫化物を添加した溶融塩浴で処理する方法が発表され，以来，ヨーロッパを中心に実用化に向けて種々の研究が行われた．これらの方法により処理された材料は，耐摩耗性，耐焼付性，耐力ジリ性に優れた効果を示した．しかし，塩浴法の場合N濃度とS濃度を別々に制御するのが困難で，応用面で制約を受ける．その点，ガス浸硫窒化法はN濃度とS濃度を別々にしかも自在に制御できるので，品質，コスト，量産の面で可能性が高く応用範囲も広い．そこで，安全でかつ安定したガス浸硫窒化法（マルチナイト）の開発を行った．