鉄鉱石焼結機における排ガスの可視原因の解析

摘要

鉄鉱石焼結プロセスは，製鉄所において，とりわけ大気への環境負荷が大きいプロセスであり，これまで環境負荷低減へ向けた数多くの努力がなされてきた。 排ガス中のダストに関しては，移動電極式集塵機などの高効率な電気集塵機の開発·導入により，排出量低減が積極的に進められてきた。 脱硫·脱硝設備についても，従来の湿式処理設備に加えて，活性コークス吸着を利用した乾式脱硫脱硝設備が実用化されている。 また，2000年1月には「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行され，焼結でのダイオキシン類の挙動解明と低減技術のための基礎研究が精力的に進められてきた。 焼結機排ガスについては，これらの環境規制と別に，その煙色がしばしば注目される。 焼結機の煙突は高いため目立ちやすいこともあるが，通常の焼結機排ガスには，他工場の排ガスに比べて長くたなびく特徴が見られる。 そのため，都市景観への影響や心理的な印象など目に見えないところで，製鉄所のマイナス評価要因となっている懸念が拭えない。排ガスの煙色については，環境に直接影響する現象ではないことや，評価が人の感性に関わるものであることから，これまでの研究例は少ない。 斎藤らは，Mieの散乱光理論に基づいてダストの粒子径と濃度の関係から可視領域の範囲を推定し，重油ボイラーの煙色におよぼす硫酸ミストの影響を説明している。 これは排ガスの煙色を科学的に解釈する興味深い考え方であるが，推定領域の妥当性についてはほとんど検証されておらず，ガスおよびダストの性状が異なる焼結排ガスでの推定には慎重な検証が必要と思われる。 本研究では，従来の研究例がほとんどない焼結機排ガスの煙色に着目して，焼結機の排ガス成分やダストの詳細な解析を行い，可視煙の原因物質に関する考察とその回避技術について検討した。