中性子回折による水素位置の解析

摘要

中性子回折は金属あるいは合金の水素化物の結晶構造解析のための唯一の手段と言って良い．さらに，水素を大量に含む水素化物は粉末状で，単結晶を得ることができない．これらの条件によって，金属水素化物の水素位置の決定，すなわち結晶構造解析に関しては，リートベルト解析に代表される粉末を用いた解析法を採用しなくてはならない．リートベルト解析法とは，回折パターンが構造因子，プロファイル関数およびバックグランドから構成されていると仮定し，それら全てをモデル化して最小自乗法でそれぞれのパラメータを最適化するものである．単結晶法による結晶構造解析が困難とされた酸化物高温超伝導体の解析で威力を発揮したことを記憶しておられる方もあろう．ここでは，粉末中性子回折データを用いたリートベルト解析によって精密化された金属および合金中の水素の位置について述べ，金属および合金の水素化物に関する理解の一助にしたい．