工業炉の製造技術者が知っておくべき熱処理技術 第2回（全3回）

摘要

鉄鋼材料の色々な性質は，固まっている時の状態，つまり，原子と原子の結合の仕方によって依存している。一般的に原子は，特定の集団によって分子が造られ，分子と分子との比較的弱い引合う力によって気体。液体，固体と呼ばれる3体によって形態が保たれている。図21はその状態の変化を，原子モデルで示したものである。このような現象を，コップに入れた水と砂糖で示したものである。コップに水と砂糖を入れ，良くかき混ぜて冷蔵庫で冷やす。温度が下がってくると，砂糖の核ができ，その核を中心に周りの水が凍り始める。温度が下がってくるに従い氷りの量が増え，最終的には全部が凍る。この場合，一つの核から成長した塊が，隣から成長してきた塊とぶつかり合うところで，成長が止まる。成長が止まった所を結晶粒界と云い，結晶が成長した部分を結晶粒内と呼んでいる。固まり方（結晶が成長）は，ゆっくり冷やすか早く冷やすかによって純度が異なり，早く冷やすと巻き込んだ酸素が抜け切らず，ゆっくり冷やすと十分に酸素が抜け，透明できれいな不純物の無い結晶粒内ができる。鉄鋼材料の場合も同じである。含まれる酸素の量によって，鋼の良否が決まる。図22は金属が固まる過程を示したものである