日本における職業教育の変遷

摘要

日本の高い成長率は幕末以来の持続的·構造的な傾向であり，世界にも例のない急速な復興と経済発展を支えたのは，経営と教育とが密接に連携した日本型人材養成システムと，長い間に渡って培われて来たものづくりの伝統である。日本製品の優秀さと高い信頼性はよく知られているところであり，極めて精密で高精度の製品やサービスを，顧客の求めに応じてどこまでも高い水準で作り込もうとするその姿勢は，単なる製造や生産を越えて芸道の域に達するものである。こうした日本の伝統に根ざした高い精神性を持った創造的な生産活動や基盤的技術は「ものづくり」と呼ばれている。大量生産·大量消費の時代にあって，人と物との間を結び，製品の使われ方や，その先にある人々の生活までを見据えた心のこもったものづくりは，日本独自の文化そのものである。本稿では，職業教育の変遷に着目し，日本のものづくりとその基層をなす「日本の人づくり」について考察する。