多発結節影を呈した悪性胸膜中皮腫の1例

摘要

要旨：症例は無症状の75歳,男性.鼠径ヘルニア手術前の胸部単純X線で異常を指摘され,当科を受診した. 胸部CTで左肺内に結節影が多発していた.結節影の中にはextra-pleural sign陽性のものや葉間をまたぐ ように存在するものがあった.明らかな胸水や胸膜肥厚は認めなかった.胸膜直下の結節に対する超音波ガ ィド下穿剌吸引細胞診class Vの結果とCT所見から胸膜中皮腫を疑い，全麻酔下胸腔鏡を施行した.壁側，臓側胸膜に結節が多発しており，その生検にて二相型悪性胸膜中皮腫と診断された.現在,シスブラチン (cisplatin ： CDDP) +ぺメ卜レキセドナ卜リウム水和物（pemetrexed sodium hydrate ： PEM)にて化学燎法中である.悪性胸膜中皮腫の画像所見としては，胸水や，びまん性胸膜肥厚を含め，さまざまな画像所見を呈するが，本例のように胸水，胸膜肥厚がなく，多発結節影を呈することはまれである.一側胸郭内多発 結節影の鑑別疾患の一つとして悪性胸膜中皮腫も考慮すべきである.